第1章 YOURNAME【明智光秀】 【R18】
―……
今日の予定はフリー、昨日の昼まではそうだった。
でも昨夜“予約”が入ったので、私はドライバーとともにお客様の元へ向かっていた。
指定されたのは新宿駅徒歩0分のマンション。セキュリティこそ厳重にされているが窓の大きさ的に単身世帯用のマンションだろう。 この時点でお客様の“異質さ”は伝わっていた。
≪よくこんなところに住もうと思うな……というか、こんな場所に"居住用の家"ってあったんだ。≫
このお店の常連様のお宅はだいたい六本木・青山・白金・お台場・田園調布などの“高級”のイメージがついたところだ。
なかには政宗みたいに車を安く持ちたいという理由で横浜に住んでいる人もいるけど、少なくとも新宿の繁華街のど真ん中の単身世帯用のマンションに住んでいる人というのはレアケースだった。
「じゃあ桔梗ちゃん、ちょっとお客様と面談に行ってくるね。」
「いってらっしゃいませ。いつもありがとうございます。」
問題行動を起こしそうにないか、支払いを拒否することはなさそうかなどの“審査”を兼ねた初回のお客様との事前面談に向かうドライバーも多少困惑した様子だ。
私も正直……このお宅に住んでいる人ってどんな人なのか全く想像できない……。
ホストさん?……いや、ホストだったらもうちょっと見栄張った場所に住んでいる場合が多いし……
会社員?……それにしたってもう少し“住み心地”を考えてもいいと思う。
しばらく経つと初回分の料金を徴収してドライバーが戻ってくるが、その表情はなんともいえないものだった。
「うーん……悪い人ではない……かな?
源泉徴収を確認したけど年収も文句なしだし、不審な行動をするような人でもないと思う。
ただ何かもし危険な目に遭ったらコールしてね。」