第2章 後編
「わっ、ちょっ、何!?」
シルビアの首にかじりつくように抱き着き、必死に体勢を崩させようとする。
「ちょ、○○!やめなさい!!」
まるで野犬のように暴れる○○を慌てて抑え込むと、地面に押し倒し、しばし二人で荒い息を吐いた。
「な、何なのよ一体…どうしたの…」
シルビアは、両ひざで○○の腰を挟むように膝立ちになった。
○○は地面に大の字になったまま、鼻の頭と目頭を赤くしている。
――平手が、シルビアの頬めがけて飛んできた
が、それも軽くいなしたシルビアは、逆に○○の手を大地に縫い留めるように押し付けると、
「子供みたいなマネ、しないのよ」
○○の顔に自らの顔を近づけ、噛みつくように言った。
――身体が小さければそれを生かして相手の懐にとびこみ隙をつく――
○○が見せたのはカミュ直伝の技だが、シルビアは
「わかるでしょ。近づきすぎれば当然、こういうことにもなるのよ。」
――所詮はか弱い女の力だ。
一度抑え込まれてしまえばもはや、抗いようなどあるはずもない。
こちらをにらみつけてくる○○を見下ろしながら、シルビアは言った。
「思い上がるのも、大概にしなさい。」
それとも。
「――もっとひどい目に遭わないと分からない?」
――しかし。
○○の唇から、震え声が漏れた。
「…ばか」
「え、ええ?」
唐突過ぎて、思わずどもるシルビア。
○○の声はすねた幼児のように、弱弱しい。
「シルビアのばか、いじわる、無神経…」
だいきらい、と震える鼻声が続いた。○○は片腕で目元を隠す。