第3章 懸賞金
後ろの谷崎たちに聞こえただろうか。
少なくとも、敦には聞こえていたようで、はっと息を呑むのが分かった。
「其の肩書が建前だってことも知っているのなら、少し黙ってくれないかな」
自分は昔、太宰と共にポートマフィアを抜け出した身だ。
太宰の部下だった芥川と面識があるのは当然の事で、当時は親しくしていたのだが、──…まぁ、そんな事は如何でも良い。
組織内では実力と同程度には評価されていた。
肩書きこそ幹部補佐であったものの、幹部会議には毎回呼ばれていたし、組織内での権威は相当なものだったと思う。
居心地も悪くはなく、否寧ろ良い方で、親しい同僚もいたが、太宰がいないのならここにいる意味はない。そう思い、彼らを裏切ったのだが。
──矢っ張り、肩書きは敦たちを怯えさせるに充分だよね。
覚悟はしていたが、仲間から恐怖の目を向けられるのは精神的に来るものがある。
然し、芥川はそんな事を気にするような男ではない。