第11章 取り戻せ
「そこでね、僕から提案がある」
今迄黙っていた事からの罪悪感か、乱歩は珍しく自分から提案をした。
「北米迄行くのには遠すぎるからね。奴等を呼び出すんだよ。非道だとは思うけど──…日本にまだ残っている、組合のメンバーを人質にすればいい。彼は仲間想いだからさ」
「でも、菜生さんが着いてくるとは…」
「いーや、大丈夫。フランシスは片時も菜生から離れようとしない筈だからね」
少しずつ、太宰の取り巻く空気が冷たくなっているのを誰もが感じ取ったが、此処で屈しるわけにはいかなかった。
凍るような温度を体感しつつ、社員たちはデスクに走った。
組合の、残っている者たちを調べそして、人質として捕らえる為に。