第3章 3 そして平常の音色を
「…………………………なんだ游馬かよ」
鋭い紅が、少し優しい表情になる。
『はは……誰だと思った?』
「俺が今までぶっ飛ばしてきた奴等」
「呑気な会話をしてる暇があるなら俺を離して」
下の方から恋滋の悲しげな声が聞こえる。
「おおわりぃつい条件反射で」
熾妖が笑いながら手を上にあげると、荷物の山から恋滋が顔を出した。
『何してるんだよ…』
「熾妖に輩と勘違いされて攻撃受けた」
「車、もうでていい?」
怒る恋滋に熾妖が笑いながら弁解していると、前席から要の眠そうな大きい声が聞こえてきた。
それを待っていたかのように熾妖が手をパンパンと叩くと、車はしずしずと走り出す。
「てか碧は?神希は?」
数分が経ったとき、死んだように倒れて涼んでいた僕と恋滋に、熾妖がそう問い掛ける。
『あの二人は朝早くに行っちゃったんだ』
熾妖から受け取ったソーダアイスを舐めながら、僕は呟く。