第3章 3 そして平常の音色を
「そして俺は寝坊」
『ははー寝坊のわりには髪をきちっとセットしてますねアホ毛マン』
「おっいいねアホ毛マン」
「やめてよ!
お前らどうせクラスの連中に広めるだろ?!
やめろよ?!」
「すげぇなお前。
エスパーか?」
「ヤル気満々だったんかいぃぃ!」
『恋滋のツッコミ術があがりましたまる』
「そんなもの上がっても嬉しくありませぇん
イケメソ力が上がればいいです」
「たらららったったー
恋滋のイケメソ力が1になった
MAXになったくろさんかくしたむき」
「くろさんかくしたむきってあれですか?
ドラ○エとかのコマンドとか会話に出てくるこれ?」
恋滋が携帯に入力された記号の▼を指差す。
「正解正解大正解」
『恋滋の知恵が1上がった
もう上がることはないだろうくろさんかくしたむき』
「いやー!やめて俺を苛めないで!」
恋滋と熾妖が取っ組み合いを始めようとしているのを見ながら、僕はなんとなく昔を思い出した。
目を閉じて、再び開く。
長い黒髪を垂らした困り眉の不安そうな少年と、短い茶髪っぽい黒髪を綺麗に切り揃えられたアホ毛の冷たい目の少年。
あの頃は、こんな事になってるなんて想像もしなかったな。
瞬きをすると、光景はいつものものに戻っていた。
銀髪の青年が冷ややかな笑みを浮かべ、アホ毛で桃色の青年に馬乗りになっていて、アホ毛に至っては真っ青な顔で「ごめんなさいすいません」とひたすら謝ってる。
これが今なんだな。
そう思い、僕はしばし横になった。