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解読不能ーanotherー

第3章 3 そして平常の音色を


「みーちゃんと神希くんはいないのかな?」

落ち込んだ声が耳に飛び込み、ハッとする。

ああ。そうだ。
今はこんなことどうでもいいじゃないか。

「俺ら今日出るの遅くて、先行っちゃったんだよあの二人」

『僕と一緒にしないでよ恋滋』

僕がわざとらしく呆れ顔で言うと、恋滋はばつが悪そうに口角をつり上げた。

「いないのかぁ
でも、君達二人が居ればあの子も喜ぶね」

人懐こい笑みが、脳に鮮明に焼き付いた。

「んで、熾妖は車のなか?」

「うん寝てるよ。ぐっすり」

『要さんはちょっと熾妖の事甘やかし過ぎじゃないですか?
熾妖がヘロヘロになっちゃいますよ?』

ゆらゆらと歩き出しながら、他愛もない言葉を交わす。

「一人しかいない兄弟だからねぇ
甘やかしたくもなるってもんだよ」

「うへぇ俺は寧ろ兄貴に苛められてる」

『こうなると一人っ子の僕が最強だね』

「そんな話してたっけ?!」

「はははは楽しそうで結構」

要が手に持った小さなリモコンを押す。

ピッピピッ

「二人は後ろにのってね
荷物置いてあるけど踏まないように」

そう念を押し、要はするりと運転席に座る。

「外国車っていいよな
俺も要クンみたいに乗り回したい」

恋滋が目をキラキラと輝かせながら車にペタペタと触る。

『そんなに触りたいなら走行中は外装にへばりついてな』

「ごめんなさい」

『以外といけるかもよ』

青くなる恋滋を軽く受け流し、僕はきらびやかな外装にあしらわれた黒い取っ手を掴む。

カチャリ、と小さな音がなる。

数秒後、僕の意思とは関係なく、扉がスムーズに開いた。

遮光カーテンだろうか。
黒く分厚いカーテンが現れる。

「ユマユマ早くはいれや」

『はいはい』

なるべく音を発てないようにカーテンを捲り上げ、車内へ足を踏み入れる。

光になれた目が暗闇の中で拒絶反応を起こす。
実際はそれなりには明るいのだろうが、真っ黒すぎて何も見えない。
そして、茹だるような暑さとは一変し、心地好いくらいの冷風が首筋を擽る。

「暗っ!真っ暗闇やん」

恋滋が僕を押し退け、すかさず暗闇にダイブする、ように伺えた。

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