第3章 3 そして平常の音色を
「ん?」
警官はクラクションのなった方向に目を向け、そして
嬉しそうに微笑んだ。
微笑んだ?
「わぁ見てよユーマ!
要くんだよ!」
恋滋のはしゃぐ声でハッとして、後ろを振り返る。
少し遠くに黒い外国車が止まっていた。
左側の運転席から、誰かが出てくる。
黒髪の青年だった。
「要くんおはよー!」
『恋滋。
年上に少し位は敬意を払いなよ』
「警官さんとゆことで俺らもういきま……す?」
恋滋がすっとんきょうな声をあげた。
『変な声出さないで恋滋』
「警官さんが居なくなったよ」
『は?なにいって……』
釣られて僕も後ろを振り向き、口を閉じる。
確かに、恋滋が言った通り警官は居なかった。
だが、それに違和感を感じる。
長い坂は一直線であるし、脇道などない。
もしもこの数秒の間に駆け降りたのだとしても、必ず足音が鳴るはずだ。
だが、そんな音は全く聞こえなかったし、そんなことをする意味がわからない。
「おいおいお前達。
なぁにこんなところで油を売ってるの?」
二人でぽかんと突っ立っていると、黒髪の青年が、親しげに声をかけてきた。