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解読不能ーanotherー

第3章 3 そして平常の音色を


この人は天然なのだろうか

「ああそうだったそうだった
んじゃ、気を取り直してだね」

「警官さん天然ですねぐえふっ」

『すみませんコイツ馬鹿なんで』

僕はかなりの速さで恋滋の腹にパンチを入れる。

「あははは
えっとね、単刀直入に聞くんだけどさ、
君達はこんな時間に何をしているんだい?」

警官は自らの懐から、円形の鉄塊…もとい、懐中時計を取り出し、僕と恋滋に見えるように向ける。

カチッカチッカチッカチッ

古風で、金色の鎖が絡まった黒と赤の紋様が描かれたソレに、僕は無意識下に見入ってしまった。

中蓋は少し傾けられているが、何か写真が入っているのが見えた。
あまりはっきりとは見えないが、四人程の少年少女が写っている。

「もう9時過ぎだけど、学生諸君は何をしているのかな?」

パンッ

懐中時計が閉じられ、僕の意識は灼熱の中心に引き戻される。

「あー
これには理由があるんだよ警官さん」

くいっと、幽かに制服を引っ張られる感覚を覚える。

恋滋に視線を向けると、かなり不安そうな表情で僕を見ていた。

ちらりと警官に目を向ける。

警官は懐中時計を仕舞おうとしている途中だった。

「……………はぁ」

どうせ恋滋に至ってはただの寝坊だろう。
…………………………まあ僕も恋滋にならえだが。

僕は眼鏡を持ち上げるような仕草で顔に指を当てる。

素直に寝坊と言えば済むかもしれないが、なにしろ道で立ち止まってわちゃわちゃしていたのだ。
それだけでは納得してもらえないかもしれない。


そんな僕の思考を遮ったのは、車のクラクションだった。
 
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