第5章 前夜
兵長の部屋を出ると、キョウカさんの執務室に向かった。
早く会いたくてどうしても早足になっちまう。
「失礼します!」
「はーい。
あれ、エレン早かったね」
「はい、兵長が今日は早めに寝ろって」
「そっか。
じゃあ少しだけ待ってて貰っても良いかな。
この書類すぐに仕上げちゃうから」
「はい」
真剣な表情で書類に目を通すキョウカさんをジッと見つめる。
「はい、終わり。
お待たせ」
「いえ」
「じゃあ行こっか、エレン。
お風呂はもう入った?」
「あ、まだです」
「もし良ければ私の部屋のを使うと良いよ」
「ありがとうございます」
執務室を施錠し、私室へと向かう。
思いを告げたあとも変わらず接してくれている。
...意識している様子はねぇ。
関係が変わらなかったことに安心すべきか、意識されねぇことに落ち込むべきか。
分からねぇ。
「着いた。
隣の部屋はハンジの私室だから、間違っても開けないようにね。
研究されちゃうよ?」
クスクスと悪戯っぽく笑う。
「お、お邪魔します」
「そんなに固くならなくて良いのに。
エレンは真面目だね」
「そうですか?」
「うん。
リヴァイなんて何も言わずにズケズケ入って来たから」
「...兵長も、この部屋に来たことあるんですか?」
俺の中に黒いモヤが生まれる。
「うん、まぁ」
なんの為に兵長がキョウカさんの部屋に来るんだ?
セックスする為か?