第11章 噂の行方
「エレンのご家族って何してる人?
ひょっとしてお金持ち?」
遠慮なくお盆を隣に置き、腰をおろすリザさん。
「...父さんが医者です」
「お医者様!
素敵!」
早く退いてくれねぇかな。
キョウカさんが来ちまう。
「エレン、あたし考えてみたの」
「何をです?」
面倒くせぇと思いつつも問い返すと、タイミング悪く兵長とキョウカさんが食堂へ現れた。
ザワザワと食堂内が騒がしくなる。
「なーに、あれ。
カップルはカップルでひっそりと食べればいーのに。
個室のある分隊長サマなんだから」
頬杖をつきながら詰まらなそうに告げるリザさん。
一瞬だけキョウカさんと目が合ったが、すぐに逸らされた。
その口元がゆっくりと動く。
『向こうで食べよ?』
兵長に向かってそう告げている。
俺はまた一緒に過ごせねぇのか?
「あの人のことばっかり見てないで、あたしを見て」
顔に手を添えられて、リザさんの方を向かせられる。
「あの、俺キョウカさん達と食べる約束してるんで」
「良いじゃない。
あの2人だって、2人きりになりたいんじゃないのかしら。
エレンはあたしと食べましょ」
席を立とうとしたところで、腕を掴まれる。
その拍子にリザさんの身体が俺に触れた。
「でも...」
強く言いてぇけど、先輩だし女だしで上手く言えねぇ。