第5章 秘密
コンコンコン―――
「書類をお持ちしました」
「どうぞ」
「失礼します。」
真琴はいつも通り書類を持ち副社長室へ入る
「またあなたね…」
伊織は呆れ顔で仕事を続ける
「私では不満ですか」
「その顔、見てるとイラッとするわ」
「そうですか。」
「何その態度」
仕事を続けていた伊織が振り返り真琴を睨みつける
「でも秘書なら一緒に居られるじゃないですか」
「は?……っ」
「好きなら一緒にいられる時間って大事だと思います」
「なによ、一緒って行っても副社長は忙しいのよ。そんなの…」
「私はこの時間を大切にしてます。こうして資料や書類を届けて話せる時間を」
「そいうとこ!あんたが嫌いなのは!意味わかんないのよ!」
ガチャと扉の開く音が聞こえた
「大声出してなにしてるの?」
久遠がそこに立っていた
「っ…副社長…!」
睨みつけていた伊織の目がハッと開く
「伊織。君はそうやって嫌がらせをするのはどうして?」
「え…」
「君が何人もの社員をいじめるのはどうしてと聞いているんだよ」
「ど、どうして…副社長がそれを…っ!」
久遠の言葉に驚く伊織は自ら認めていることに気づいていない
「君は仕事が出来る。だが、人への思いやりが少し欠けている」
その言葉を聞いてだんまりな伊織
「幸いなことにやめた者はいない。だけど君がそれをやめなかったね?気の済むまで」
「ち、違います!副社長の為と思い…!」
「それは俺の勝手だろ?ズカズカ人のスペースに入るなよ」
穏やかな顔をしていた久遠が伊織を睨みつけていた
「っ…ひ…す、すいません…」
「分かればいいんだよ。分かればね?」
「は、はい。明日からは心を入れ替えて…」
「明日から君はクレーム対応の担当だよ。仕事のできる君にはとても合っていると思うよ?頼むね」
「っ…はい…」