第4章 嫉妬と誘惑
「私が、ですか…?」
「ええ。」
「そ、それは見間違いじゃ…」
「ふふ。いい加減にしなさいよ。地味でろくに仕事もできない泥棒が!」
「っ……!」
突然の伊織が声を上げ驚く
「あなた如きが副社長と何してるのよ。どうせ言い寄って誘惑か何かしてるんでしょ?いい?あの方には許嫁くらい居るわよ!あなたレベルの女じゃ釣り合わないわ!」
「……え?」
「今後、副社長室に用がない時以外は入らない事ね。ごめんなさい止めちゃって。早く仕事に戻って」
伊織に押され副社長室を出る
頭の中では整理がつかず放心状態だった
「先輩!」
少し先を歩いていた小湊が振り向き走ってくるのが見えた
「だ、大丈夫ですか?…何かあったんですか?」
「………」
「先輩?…」
小湊が顔を覗き様子をうかがうと真琴はゆっくりとオフィスの方へ歩き出した
「…なんで……?」
歩きながら先程の伊織の言葉が頭の中で響く
どうしてバレてしまったのかと考えた
「先輩?…やっぱり何かあったんですよね?」
「…どうして…なの…?」
「先輩!止まってくださいよ!」
小湊が自分の前にたっていることに気づいた
「へ?…どうしたの?」
「それはこっちのセリフですよ。さっき何か言われたんですか?」
「あ、いや…資料に訂正箇所が…」
「今日の残業、僕がしますから先輩は帰って寝てください。」
「え?…何言って…」
「最近あまり寝てないですよね。だからここで倒れたら困ります。帰って寝てください」
小湊は真剣な眼差しで言う
「ごめん…心配かけて。でも、大丈夫だから…私もちゃんと残業するから」
「無理しないでくださいよ?もし眠かったら寝てください。」
「うん。ありがとう」
そう言い2人はオフィスへ戻る
その日の残業はちゃんと仕事を進め早めに帰った