第2章 Frustrating feeling…
最後のステージが終わり、無人のステージに向けられた照明が落とされる。
「お疲れ、明日もまた頼むな」
劇場二階の楽屋を覗き、帰り支度を始めたダンサー達に声をかけた。
ダンサーとは言っても所詮はストリッパー。
皆それなりに見てくれは悪くないし、寧ろ男の割には美形揃いだ。
尤も、智程…ではないが…
「あ、翔さん。智は? 今夜飲む約束してたんだけど、さっきから連絡取れなくてさ…」
階段を降りようとした俺に声をかけてきたのは、ニノだった。
ニノは所謂“ドサ回り”のストリッパーで、毎月一週間ウチのステージに立っていて、ウチでは智の次に客入りの良いダンサーでもある。
ニノ目当ての客だって少なくはない。
元々人見知りの智も、ニノとだけは割と打ち解けていて、月に一度ニノと飲みに行くのを楽しみにしているようだった。
「智ならステージ終わってすぐ帰ったけど? 寝てんじゃないのか?」
たった数分のステージに全神経を注ぎ込む智だから、マンションに帰った途端、糸が切れたように倒れ込むこともよくある。
現に俺は智のそんな姿を何度も見てきてるし…
「うーん、でもさずーっとかけてんだよ? こんなに出ないなんてさ、変じゃない?」
そう言ってニノは自分のスマホに発信履歴を表示してから、俺の前に差し出した。
そこには、五分おきにかけたと思われる履歴が残っていて…
「確かに…な…」
いくら寝起きの悪い智でも、数十回も電話を鳴らされりゃ、嫌でも起きる筈…。
何かあったのか…?
そう思ったら急に不安が込み上げて来て、俺は階段を駆け下りると、残りの仕事を副支配人の雅紀に任せ、劇場を後にした。