第7章 Fate…
ジェットコースター並の運転に、半ば三半規管をヤラれながら茂子さんの店に着いた俺は、早速部屋の掃除を始めた。
茂子さんの店は店舗兼住居になっていて、店の二階部分は茂子さんのプライベートゾーンになっていて、俺に宛てがわれたのは、以前世話になってた時と同じ部屋だった。
当然だけど、ずっと締め切ったままされていたわけだから、部屋の空気はすこぶる悪い。
「掃除とかは別にいいけど、せめてさ空気の入れ替えくらいすればいいのに…」
「だって仕方ないでしょ、アタシだって暇じゃないんだから…」
窓を開け放ち、わざとらしく咳き込む俺に、押し入れから布団を出しては、次々物干し竿に掛けて行く茂子さんが言い訳をする。
まあ、分かってるけどね?
茂子さん、自分の身形に関しては煩いけど、それ以外のことに関しちゃ、全くと言っていい程適当なひとだからさ…
でもそんな茂子さんだからこそ、俺も気楽に居られるんだけどね。
「あ、でさ、俺考えたんだけどさ…」
「あら、何を?」
ほらね、この調子だ(笑)
「だからさ、俺の仕事っつーかさ…」
「ああ、その事ね! で、アンタどうしたいの?」
白い割烹着を脱ぎ、頭の頰っ被りを取った茂子さんが、畳の上で両足を伸ばした。
「ホントはさ、ショーとか出れるんだったら、俺もその方が良いんだけどさ、そういう訳にもいかなくてさ…」
俺の話を、茂子さんは何も言わず、じっと聞いてくれる。
智もそういうとこあったけど、もしかしたら二人似てんのかも(笑)
「だからさ、カウンターに出るのは…やっぱ出来ないけど、キッチンの方だったら出来るかな、って思ってさ…」
キッチンなら、客の対応もしなくてもいいし、顔を見られることもない。
今の俺にとっては打って付けの場所だ。
ただ、料理に自身があるか、って言ったら…それは疑問だけど(笑)