第29章 Another dancer…【Extra edition】
お互いの気持ちを確認し合った途端に、何故だか気まずくなる俺達…
俺は、再び渋滞を始めた帰路を、無言でハンドルを握り続けた。
でもなあ…、腹が満たされると、当然襲って来るのが睡魔ってやつで…
「ふぁ〜あ…」
堪え切れす出てしまった欠伸を、咄嗟に手で塞いだ。
「疲れた…よね…、運転任せっぱなしだし…」
「ぜ、全然大丈夫…じゃないかも…」
「だよね…。ごめんね、俺免許とか持ってないから…」
「気にしないで?」
申し訳なさそうに瞼を伏せるニノの頭を、そっと撫でてやると、擽ったそうに肩を竦め、視線を窓の外へと向けた。
「あの…さ、今日はもう劇場には行かなくても良いんだよ…ね?」
「ああ、うん…」
劇場には、支配人の俺がいなくても、副支配人の滝沢もいるし、何より安心して全てを任せられる坂本さんだっている。
別に俺がいなくたって…
「だったら休憩…してく?」
「そうだね…、まだ時間かかりそうだし、どこか適当な場所で…」
と、そこまで言って、俺は車窓へと向けたニノの視線を追った。
そこに建ち並んでいたのは、いかにもな電飾で飾られた、まるでお城のような建物で…
「えっと…、あの…、ニノ…?」
「休憩…、したいでしょ?」
あ、そっか…、休憩ね…、そうだよね…、いならなんでも気が早すぎるよね…、何考えてんだ、俺(笑)
「じゃあ….、ちょっとだけ…」
見渡す限り、ファミレスみたいな所もないし、仕方ないよね?
もし居眠り運転の末事故起こして、ニノに怪我でもさせたら、それこそ後悔しきれない。
俺はウインカーを左に出すと、チラッと後方を確認してから、素早くハンドルを切った。
数台は停まっているだろう車を避けるように、一番奥の、一番目立たない駐車スペースに車を停める。
エンジンを切り、車を降りようとしたその時、俺はふとあることを思い出した。
そう言えば俺…、ラブホって初めて来たかも…