第27章 All for you…
そして今…
俺は異国の地へと続く空の上にいる。
勿論、俺の隣には翔がいて…
この先に待ち受けるであろう苦難に、不安ばかりが募って行く俺の肩を抱き寄せ、人目を避けるようにして俺の頬にキスをする。
たったそれだけのことで、不安は期待へと変わるのだから、不思議だ。
「なあ、翔…? ずっと俺の傍にいてくれるか?」
この先、何があっても、ずっと…
「それは…分かんねぇな…」
「は? なんだよそれ…」
「だって考えてもみろ…、大体いつも俺から離れて行くのはお前の方だろ?」
「そ、それは…否定しないけど…」
ったく、痛いとこ突きやがるぜ…
「…んな顔すんな。ほら、顔上げろ…」
俯いてしまった俺の顔を、翔の両手が包み込む。
「いいか、智。俺はお前から絶対逃げないし、何があっても離れるつもりはねぇ。例えお前が俺から離れたとしてもな?」
翔…
「ずっと待っててやるから…。だってお前の帰る場所は、俺の腕の中しかねぇだろ?」
違うか?
と問われ、俺は首を横に振って答える。
そうだ…
俺の行く先にはいつも翔がいて…
立ち止まりそうになった時には、いつだってその大きな愛で足元を照らしてくれる。
だから俺は生きていける。
だから俺は今日も踊る…
眩いスポットライトの下
蝶が鱗粉を撒き散らすように汗を飛ばし
蝶が羽根を羽ばたかせるように
俺は踊る…
翔と…
俺を許し、至上の愛で包んでくれた人達のために…
俺は踊り続ける…
焼け付く程熱くて、眩いスポットライトの下で…
『踊り子』完