第24章 A piece…
ただこんな自分を消してしまいた一心で、薬に溺れた。
いつかはこんな日が来ると、頭の中では分かっていながらも、薬の誘惑には打ち勝つことが出来なかった。
上手く隠せてるつもり、この先も上手く隠し通すつもり…
明らかに身体は変調を訴えているのに…
いや、身体だけじゃない、頭も…そして心だって壊れ始めていたのに…
きっと全ての判断力が、薬のせいでぶっ壊れてたんだと思う。
でもまさかこんな形で知られるなんて…、正直、想像もしていなかった。
目の前に、薬の袋がぶちまけられた瞬間、もっと早く…あの時…翔と出会う前に死んでおけば良かった、と後悔した。
そうすれば、俺を息子のように可愛がってくれた近藤を悲しませることも、ニノを泣かせることもなかったのに…
それに潤だって…
俺のために…俺なんかのために、二度も人生を棒に振るような真似をしなくて済んだのに…
自分自身の心の弱さがもたらしたことへの後悔と、どれだけ謝罪の言葉を重ねたところで購うことの出来ない罪の意識が、朦朧とする意識の中で鬩ぎ合い…
俺は自らの心に蓋をした。
それしか、自ら命を絶つことも出来ないこの状況から、逃げ出す術が見つからなかった。
結局俺は逃げたんだ。
近藤からも、ニノからも、潤からも…、そして俺自身からも…、逃げたんだ。
その後のことは、正直あまり…と言うか、殆ど何も覚えていない。
気付いた時には見知らぬ場所に寝かされていて、見知らぬ男が二人…、酷く疲れた顔で俺を見下ろしていた。
その時の俺には、そこが近藤の自宅で、見下ろしている顔が、ニノと近藤だということすら、分からなかった。
二人は、どれくらいの間眠っていたのか、俺が目を覚ましたのを見ると、二人同時に安堵の表情を浮かべた。
「良かった…、気がついたんだね、智…」
智…
そう呼ばれても、それが誰の名前なのか、目の前の色白の男が、誰のことを思って泣いているのか…、それすらも俺の記憶には残っていなかった。
ただ一つ…
「翔…」
その名前だけが、俺の空っぽになった記憶の片隅に、赤い光を放っていた。
でもそれが何を意味するのか…
俺には分からなかった。