第22章 Not Believe…
智が隠し持っていた、近藤から渡されたと思われる携帯電話から、近藤に電話を入れた。
出ないかもしれない…
不安はあったけど、でもかけずにはいられなかった。
自分の手の中にある現実が、怖くて、恐ろしくて…
近藤は処分しろと言ったけど、どうしても処分することが出来なかったからだ。
出てくれ、頼む…
耳に宛てた携帯電話から聞こえるコール音に呼応するように、心臓がバクバクと鼓動した。
そして、プツッとコール音が止んだと思った時、
「もしもし…」
近藤の声だった。
「あの…、俺です、二宮です…」
「ああ、君か…。例の件…かな?」
おそらく智がすぐ傍にいるんだろうな…、その声は酷く他人行儀で…、仕事の電話を装っているという事は直ぐに分かった。
なのに冷静さを欠いた俺は、
「は…い、あの…、見つけました…。でも、俺っ…、どうしたらいいか…」
一息に思いを吐露した結果、
「落ち着きたまえ。直ぐにそちらに向かうから、暫くその場で待機するように」
近藤に諌められ、電話を切った。
一人で待つ部屋は、とても静かで…
時計の針が時を刻む音だけが、やたらと大きく響いていた。
近藤は一体何をしに…?
智を一人に出来る筈はないから、おそらく智を連れて…だと思うけど…
緊張…のせいだろうか…、カラカラに乾いた喉を、ペットボトルの水を流し込んで潤した。
瞬く間に空になったペットボトルをクシャリと潰し、シンクに投げ入れた。
その時、玄関ドアのロックが解除される音がして、開いたドアの隙間から、濃い色のサングラスをかけ、ロングコートを見に纏ったオーナーが顔を覗かせた。
「えっ…、どう…して…?」
オーナーは戸惑う俺を横目に、ズカズカと部屋に足を踏み入れると、ダイニングチェアの背凭れに脱いだコートをかけ、そこに腰を下ろした。
「で? 俺に話って?」
「あの…、それは…その…、オーナーこそどうして?」
「どうもこうも、近藤…とか言ったっけ? いきなり電話を寄越したかと思ったら、話があるからここで待つように、って言われてね…」
近藤が…?
そんな話、さっきは一言も…
一体何を考えてる?