第19章 Clue…
「なんだ…これ…」
履歴を遡るごとに、松本潤の智に対する異常なまでの想いの深さに、俺は俄に不気味さを感じた。
そして同時に、智へのある種の執着のような物を感じた。
でもある日を境に、突然二人の会話は途切れた。
恐らく…だが、二人が交通事故にあったのがこの時期なんだろうな…
智が最後に残したメッセージは、たった一言
「上京する日の朝、いつもの公園で待ってる」
それだけだったから…
その約束通り、二人は公園で会い、その直後…
もし事故にさえ遭わなければ…
事故が二人を切り裂いたりしなければ…
若い二人の夢を打ち砕いたりしなければ…
もしかしたら二人の関係は今も変わることなく続いていたのかもしれない…
いや、たとえ形を変えたとしても、今のような…まるで主従のような関係にはなっていなかったのかもしれない。
お互い何一つ隠すことなく、腹を割って話せる友人として付き合えていたのかもしれない。
全ては“かもしれない”という仮定でしかない。
でもそう思うと、憎らしい筈の松本潤が、やけに不憫に思えてきて…
松本潤の深過ぎる程の想いに触れた俺は、胸が締め付けられるように苦しくなるのを感じた。
たが、それとこれとは話が別だ。
貴族探偵の情報が事実なら、今、松本潤が智にしていることは、愛情なんかじゃねぇ…
勿論、裏返しなんて都合の良いモンでもねぇ…
自分の欲を満たすためだけの、ただの道具と同じだ。
そして智も…
智にしてみれば罪滅ぼしのつもりかもしれないが、それが松本潤の横暴を増長させているだけだってことにも気付かず、逆らうことなく松本潤の言いなりに…
ニノにしてもそうだ。
借金のカタだかなんだか知らねぇが、どうせそれだって智を自分の元に引き寄るために利用されたってことに気付いていない。
いや、アイツは利口な奴だから、もしかしたら松本潤よ真意を知った上で…ってことも有り得るのか…
どちらにせよこのままじゃ駄目だ…
俺はスマホを閉じると、鞄の中に放り込み、ジャケットを羽織った。
そしてある場所に電話を一本入れれてから、今度は雅紀に迎えに来るよう電話を入れた。
数分後、雅紀の到着を知らせるメールを受け取った俺は、胸のポケットにある物を忍ばせ、マンションを出た。