第3章 Collaboration…
「簡単でごめんな」なんて言いながら、智がコーヒーとトーストをダイニングテーブルに並べる。
本当はサラダも作りたかったみたいだけど、俺が野菜炒めを作るのに、残り野菜全部使ってしまったから、仕方なく諦めた。
三人でテーブルを囲んで手を合わせる。
翔さんも智も、特に会話をするわけではないけど、普段一人で食事をとることが多い俺にとっては、こうして誰かと一緒に…ってのが凄く嬉しい。
「あ、ねぇ、今日のステージ、智は休むんでしょ?」
今朝方まで熱で魘されてたんだ、たった一晩とは言え、それなりに体力も奪われてるだろうし…
なのに智は、
「俺、出るよ…」
トーストを頬張りながら、呆気らかんと言ってのけた。
「えっ、でも無理しない方が…」
「心配すんなって、大丈夫だから」
「でも…」
頑としてステージに出ると言って引かない智に業を煮やした俺は、
「翔さんからも何とか言ってやってよ」
矛先を翔さんに向けた。
流石の智も、劇場支配人の翔さんから言われれば大人しく引き下がる筈…新聞を開いたまま無関心を装う翔さんの手から新聞を取り上げた。
でもさ、智が智なら、翔さんも翔さんでさ…
「智の好きにしろ。その代わり、見苦しいステージだけは見せんなよ?」
って、智の唇の端に着いたバターをペロリと舐めた。
もうこうなると俺が何を言っても無駄で…
「はあ…、分かったよ、もう止めない。だから、今日のステージ、一緒に踊らない?」
マグを掴もうとしていた智の手を握った。