第17章 Betrayal…
劇場に戻った俺は、早速“M・J”という人物について調べ始めた。
…が、インターネット上で“M・J”と検索をかけてみたって、当然のことながら、かの有名な海外アーティストに関した情報が無数上がって来るだけで、俺の欲しい情報は何一つ得ることは出来なかった。
ま、最初っからそう簡単に行くとは思っていなかったから、それも想定の内だ。
俺は全ての公演が終わるのを待って、雅紀を支配人室に呼び出した。
貴族探偵と連絡を取って貰うためだ。
あの男達が、どういったルートで情報を得ているのかは、正直な所大いに謎だが、今はそれに頼る他ないのが現実だ。
俺は坂本から得た情報を、雅紀を通じて貴族探偵に伝えることにした。
ただ、電話番号に関しては、個人情報保護の点から考えて、取り敢えず伏せておくことにした。
こんな仕事をしていても、後々厄介なことになるのだけは御免だし、最悪坂本を通じて連絡をとる事だって可能だと考えた結果だった。
「後は貴族探偵からの連絡を待つだけだな…」
「そう…だね…」
「どうした、随分と暗い顔してんじゃねぇか…。何か気になることでもあったか?」
電話を切った雅紀の顔が、どこか沈んでいるような気がして、俺は一度は口に咥えたタバコを再び箱に戻した。
「実は…さ、ここ最近客の入が悪くてさ…」
「アレだろ? 智のファンだった奴らが来なくなったからだろ?」
売上の殆どは、智のファンが落とす金で賄っていたと言っても過言ではない。
売上が落ちるのは、当然とも言える。
ただ、それも一過性の物だと…、涼介が固定のファンを掴めば、以前と同じとまでは行かなくとも、それなりの売り上げは見込める筈…
そう思っていた。
でも実際はそうじゃなく…
「このままだと、劇場自体の運営も危なくなるかも…」
雅紀の言うように、もっと深刻な状態だった。
「分かった。俺も何か対策を考えてみるが、お前も踊り子達の仕込み頼むな」
どんな立派な対策を講じた所にで、肝心な踊り子が使えなきゃ意味がねぇ。
勿論、智のことは気がかりだが、今はこの劇場の経営を立て直すことが先決だ。
いつか智が戻って来れるように…
俺がこの劇場を守らねぇと…
俺は決意も新たに、仕事に没頭した。