第3章 Collaboration…
「何か飲む? 喉、乾いたでしょ?」
俺が聞くと、智は小さく頷いて、それからゆっくりと身体を起こした。
「それから着替えもしなきゃね?」
きっと汗で濡れてるだろうから…
智は俺の言葉に頷きだけで返しながら、視線を辺りに巡らせ、
「翔…は? つか、何でニノが…? あ、そう言えば約束…」
今更な疑問をぶつけてきた。
「翔さんにはリビングで寝て貰ったよ。で、俺は翔さんがあまりにもオロオロしてるから、心配になって押しかけた、ってわけ」
実際は、慣れっこになってるのか、翔さんは至って冷静だったけどね。
ただ、智と連絡が取れない、って言った時の翔さんの顔は、普段の翔さんからは想像も出来ないくらい、動揺してた。
気にするだろうから、智には言わないけど…
「そっか…、悪かったな、迷惑かけて…」
「何言ってんの、俺ら友達でしょ?」
多分、今の智が一番心許せる、唯一のね。
「あ、なあ…、今何時?」
「えっと…、丁度七時を回った所かな…」
「いっけね…、そろそろ翔起こさないと…」
「俺が起こして来るから…」
慌ててベッドを出ようとする智を、肩を掴んで引き止める。
でもその手をやんわりと払って智はベッドを抜け出し、覚束無い足取りで寝室を出ると、ソファーで小さく丸まっている翔さんの肩を揺すった。
「翔…、起きて? 仕事、遅れるよ?」
智の声が翔さんの耳に届いたのか、枕替わりにしていた腕を解いて、その腕で智を引き寄せた。
「心配かけさせんじゃねぇよ…」
「…ごめん…」
コツン、と智が翔さんの胸に額を宛てると、瞼を閉じたままの翔さんの顔が、ほんの少しだけ綻んだような気がした。