第17章 Betrayal…
一緒に暮らしていた俺でさえ知らないことを、当然雅紀も知る筈がなく…、俺達は顔を見合わせては首を捻った。
「あの…、その写真に写ってる男が、オーナーってことなんですか?」
「さあ…、そこまでは何とも…。ただ関係者であるとこは間違いないと思われます。お二人が裏の通用口から出入りしている姿もお見かけしてますから」
確かに山本さんの言う通り、全く無関係な人間が、裏口から出入りする…なんてこと、そうは出来ることじゃない。
だとすれば、山本さんの予想は正しい筈だ。
「それともう一つ…。これはまだ不確実と言いますか…、もし事実だとしたら、あまり気分の良いお話ではないのですが…」
それまで饒舌に語っていた山本さんの口調が急に重くなり、落ち着きのない視線が狭い室内を彷徨い始めた。
こんな写真を見せられただけでも、俺にとってはそこそこのショックなのに、これ以上にショッキングなことが他に…?
「何だ、ハッキリ申してみよ」
痺れを切らしたのは貴族様だ。
内心、それを決めるのはアンタじゃない、この俺だ…、そう言いたかった。
「はい、でもあの…」
でも、山本さんの心底困り果てた顔を見ると、それを言ってしまうのはどうにも憚られて…
「どうぞ、話して下さい」
俺はフッと煙を吐き出すと、何本目かのタバコを灰皿に揉み消した。
見るからに従順そうな男が、主の言葉にも従えない程口淀むんだ、不確実とは言え、とんでもない情報を掴んでるに違いない。
だったら聞かないわけにはいかねぇだろ…
今更何を聞かされようと、覚悟は出来てる。
そうじゃなかったら、俺に人を…智を愛する資格なんてねぇ…
そう思ってた。
いや、俺は高を括ってたんだ…
あの店が、ショーパブを隠れ蓑に、一流企業の重役共を相手にした売春斡旋業をしていること…
智が高級男娼として、男共の相手をさせられていること…
そして驚いたことに、行方を晦ましていた二ノまでもが、男娼をしていること…
その事実を聞かされるまでは…