第16章 To a new stage...
いつ、どうやってベッドまで辿り着いたのか…
それすらも分からない程、目が覚めた時の気分は最悪で…
ズキズキと痛む頭に若干の眩暈を感じながら、重い腰を引き摺るようにベッドを這い出た。
「ニノ…?」
狭い室内を見回しても、そこにニノの姿がないことに不安になる。
「ニノ…、ニノ…ッ…」
足を縺れさせながら、キッチンへと続くドアを開けるけど、そこにもニノの姿はなく…
アイツ、また…
俺はその場に膝を付くと、板張りの床を拳で叩いた。
また置いてかれたんだと…
また俺は一人になってしまったんだと…
そう思ったその時、カチャンと外からロックが解除される音がして、玄関のドアがゆっくりと開いた。
そして俺を見るなり、驚いたように目を見開いた二ノと視線交差った瞬間、
「どう…したの?」
俺の気も知らないニノが、何とも間の抜けた声を上げ、床に両手を着いて項垂れる俺の額に手を当てた。
「うん、熱はないみたいだね。気分は? 悪くない?」
「え…、あ、ああ…、大したことはねぇけど…」
「そっか、なら良かった。ほら、智ってさ、一見頑丈そうに見えるけど、案外弱いとこあるじゃん? だからさ、薬局連れてって貰ったんだ」
そう言ってニノは、俺の前に薬やら栄養ドリンクやらで目一杯膨れ上がった袋を差し出した。
「これを…買いに…? 出てったわけじゃなくて…?」
「そう…だけど? あ、もしかして智、俺がまた逃げ出したと思ったとか?」
「違う…のか…?」
「バカだな…。俺もう逃げないって言ったでしょ? それにこの部屋、外からしか開かないの、智だって知ってるでしょ? 逃げたくても逃げ出しようがないじゃん」
「あ…」
目が覚めた時にニノがいない…、それだけのことに気が動転して、そんなこともスッカリ忘れていた。
「ごめん、俺てっきり…」
ニノを疑うなんて、本気でどうかしてる…
「ううん、俺も一言声掛けて行けば良かったんだけど、良く寝てたみたいだから…。それよりさ、お腹空かない?」
言われて初めて気がついた。
俺、昨日から何も食ってねぇや…