第3章 Collaboration…
翔さんの許可を貰ってマンションに泊まることにした俺は、智の看病は俺が引き受けるって理由で寝室を陣取った。
家主である翔さんには、申し訳ないけどリビングのソファーで寝て貰うことにした。
散々文句言ってたけどね?
でもどうせ仕事のせいにしてまともに寝ないだろうし…
それに翔さんには聞かせたくなかったんだ、熱のせいだとは言え、熱い息と一緒に智の口から吐き出されるあの人の名前を…
だってハッキリと聞いたことはないけど、翔さんがどれだけ智のことを大切にしてるか…
どれだけ愛してるか、俺は知ってるから。
だからかな、翔さんには聞いて欲しくないし、聞かせられない、って思ったんだ。
「もういい加減忘れちゃえばいいのに…」
額の冷却材を貼り替えながらポツリ呟く。
前に智から聞いたことがある。
まだ翔さんと知り合う前、とても大切な友達がいた、って…
でもその人はもうこの世にはいない、って…
そして最後に言ったんだ、目に一杯涙を溜めて、
「俺が殺したんだ」って…
勿論、俺はそんなの信じちゃいない。
智が人を殺せるような性格じゃないことは、見てれば分かることだから。
それに智はハッキリとは口にしなかったし、俺も敢えて突っ込まなかったけど、智が“友達”だって言ったその彼のことを、智は本当は好きだったんじゃないか、って…
滅多に本音を口にしない智だからこそ、熱に浮かされ譫言で吐き出される言葉は、智の本心なんだと思う。
でもさ、智…
智がどれだけその”潤”のことを想っていたって、もうその想いはもう届かないんだよ?
「翔さんが可哀想だよ…」