第15章 Signs...
雅紀の話によれば、ニノが姿を消す数日前から、ニノが身を潜めていた店に数人の男が客としてやって来ては、ショーボーイに対して乱暴な行為を繰り返していたらしく…
それを見るに見兼ねたニノは、男達に対して「言うことを聞くから、店には手を出すな」と啖呵切った。
その時に男達の口から出たのが、他でもない、智の名前だったと…
茂子ママは、ニノから智のことは何度も聞かされていたから、それがニノの唯一の友人でもある智だと言うことは、直ぐにピンと来たらしい。
その直後、ニノは茂子ママの前からも姿を消した。
当然茂子ママは、ニノがハッキリと明言した訳では無いが、少なくともニノが姿を消した原因の一つに、智が絡んでいるだろうと確信したそうだ。
肝心な行方については、残念ながら茂子ママにも分からないとの事だった。
「やっぱアイツらが関係してんだよ…ね?」
「だろうな」
やり口から見て、ニノを執拗に追いかけ回し、更には無関係な智に乱暴を働いた奴らに違いない。
尤も、雅紀はその件については何も知らないし、俺も話すつもりはない。
「でもさ、だとしたらニノは智と一緒にいるかもしれない、ってことだよね? もしそうなら、ちょっと安心て言うかさ…」
「まあな…。その可能性はゼロではないだろうな」
いや、寧ろゼロであって欲しくない。
智が一人で泣いていなければいい。
アイツ、普段強がってるくせに、案外弱いとかあるから…
その後、特別有力な情報も得られないまま数日が過ぎた頃、雅紀の元に一本の電話が入った。
相手は、あの巫山戯た名前の探偵もどきだ。
貴族と名乗る探偵もどきは、支配人室のソファーに腰を下ろすと、優雅に足を組み、執事らしき男に何やら合図を送った。
執事は貴族様とやらに一礼すると、テーブルの上に家紋…だろうか、封蝋の押された封筒を置いた。
俺が以前雅紀を通じて依頼した、智の行方に関する調査報告書だった。