第2章 Frustrating feeling…
“じゅん”が智にとってどんな存在なのか…
それを知ったのは、智と暮らし始めて随分経ってからの事だった。
その頃になると、少しずつではあったけど、智は自分のことを話すようになっていた。
誕生日、家族構成、好きな食べ物、俺の買い与える服は本当は好みじゃない、とか…
でもその中で“じゅん”のことを智の口から語られることは、一度もなかった。
だから俺は思い切って“じゅん”について尋ねることにした。
“じゅん”は智の、一体何なのか…、って。
すると智は一瞬驚いたように目を見開いて、哀しそうに瞳な奥を揺らした。
その時俺は、聞くべきではなかった…、そう後悔した。
でも口火を切ってしまった以上、引き下がることも出来ず…
困ったように眉尻を下げる智に、更に問い詰めた。
理由なんてない…、仮にやっと開きかけた智の心の扉がまた閉じてしまったとしても、俺は知りたかった。
智の心の大半を占める“じゅん”のことを…
「そう…だよね…。これだけ世話になっといて、何も言わないって、虫が良すぎるよね…」
智は一瞬視線を上に向けると、徐に人差し指を突き出して、それを天井に向けたんだ、
「潤はね、アソコにいるんだ」
って…
「アソコ…って…?」
当然の様に聞き返した俺に、智はフワリと笑って…でも目に涙をいっぱい溜め、「…天国だよ…」と言った。
そして、
「俺が殺したの…、潤を…」
と…。
やっぱり聞くべきじゃなかった。
自分で望んだこととはいえ、俺はその時酷く後悔したっけ…。
だからかな…
こんな事が起こる度、不安になるのは…。