第13章 Life…
ほぼ同時に振り向いた二人の視線が、何も隠す物の無くなった俺の身体に注がれる。
雅紀に至っては、今にも目玉がポロリと零れ落ちそうなくらいに目を見開いていて、遠目から見ても、喉がゴクリと鳴ったのが分かる程、驚いているようにも見えた。
仕事柄男の裸なんて、飽きるほど見てきてるくせに…
「後ろ向け」
俺は言われるまま、ステージの上で、二人に向かって背を向けた。
まるで品定めをするような…、舐めるような視線が背中に刺さる。
視線だけで犯されているような…、そんな感じだった。
「どうだ? お前の目から見て、使い物になりそうか?」
”物”か…
今の俺は、翔の恋人でもなんでもねぇ、ただの”商品”にすぎない、ってことか…
それならそれでいいさ…
このステージで踊ることが出来るなら、例え物の様に扱われようが構やしねぇ。
「そう…だな…、華奢な割には程よく筋肉も付いてるし…、実際にライト当ててみないと何とも言えないけど、ステージ映えはするんじゃない?」
前に翔が話してくれたことがある。
雅紀は元々映像関係の仕事をしてた、って…
だからダンサーオーディションの最終的な決定権は、支配人の翔ではなく、副支配人の雅紀が持ってる、って。
…ってことは、俺が使い物になるかならないか…、判断は雅紀に委ねられた、ってことか…
「ねぇ、もう一回前向いてくれる?」
背中越しに聞こえた声にコクリと頷いて、俺は身体の向きをゆっくり変えた。
不思議とさっきまでの恥ずかしさは、もう感じない。
俺は全てを曝け出すように、丁度中心が隠れる位置で組んでいた手を解き、腰の横に垂らした。
どこからでも見てくれと言わんばかりに…
雅紀の視線が、俺の頭の天辺から、足の爪先まで…、舐めるように何度も行き来して、不意に中心で止まった。
そして一瞬小さく頷くと、隣にいた翔の肩を叩き、満面の笑みで親指を立ててみせた。