第13章 Life…
「ただ…、なんだよ…。言えよ…」
俺を見上げる翔を、真っ直ぐに見下ろした。
普段とは違う、ハッキリとしない物言いが、酷く焦れったく感じる。
すると翔は困ったように眉尻を下げ、俺を見上げたままフッと小さな笑いを漏らした。
「ただ…、そうだな…、分かっているとは思うが、ここに来る客の殆ど…いや、ほぼ全員と言った方が正しいか…、ダンスを目当てに来るわけじゃねぇ。前にも言ったと思うが、若くて、小綺麗な男の裸を見に来るんだ」
そんなこと今更言われなくたって、この一年と数ヶ月、捥りのバイトをしながら、イヤって言うほどそういう奴らを見てきたんだから、十分承知の上だ。
それに俺だって、あの頃の何も知らないガキとは違うんだから…
「お前、今この場で裸になれって言ったら…、なれるか?」
「えっ…?」
覚悟はしてた。
このステージで踊りたいって…、そう思った時から覚悟はしてたつもりだった。
でも、いざ“裸になれ”と言われると…、流石に抵抗を感じなくはない。
それも、俺の身体の隅々まで知り尽くした翔のだけならともかく、雅紀が見ている前で…なんて…
「どうした、脱がないのか? それとも、雅紀がみている前では嫌か?」
クソっ…、なんだってそう俺の心の中まで見透かしてやがる…
「くく、なんだ…、お前の覚悟なんて、所詮その程度だった、ってことか…。時間の無駄だ、行くぞ雅紀」
…っだよ、それ…
馬鹿にしやがって…
シャツの裾を掴んだ手が、怒りなのか、それとも図星を指された悔しさなのか、プルプルと震えた。
そしてホールを出て行こうとする二人の背中に向かって、
「待てよ…」
漸く届くくらいの声をかけると、俺は着ていたシャツを脱ぎ、ステージの上に叩き付け、続けてベルトを外し、ハーフパンツのチャックを下ろした。
「さ、智? ちょっと何やってんの? ね、翔ちゃん止めてよ…」
雅紀が慌てた様子で止めにかかるが、それにも俺は応えることなく、下着とハーフパンツを一気に床に落とした。