第13章 Life…
「答えを急ぐ必要はない。なんたってお前まだ17だしな? 流石に未成年をステージに立たせるわけにはいかねぇから…」
俯いてしまった俺の顔を覗き込み、ポンと俺の頭を叩くと、そのまま膝の上に俺を乗せ、肩口に顔を埋めた。
「擽ってぇよ…」
首筋にかかる息と、サラッと落ちた前髪が擽ったくて、身を捩ろうとする俺を、背中から腰に回された腕がギュッと抱きとめる。
「今すぐじゃなくていい。いつか俺に見せてくれよ、お前が本気で踊る姿を…」
きっと翔は見抜いてたんだ…と思う。
俺がまだダンスを捨て切れずにいることを…、そして俺の心は別として、身体が踊りたがってることを…
ダンスのことなんて、一度も口にしたことなんてなかったのに。
翔の勧めもあって、捥りの仕事を手伝い始めた俺は、少しずつ高まって行くダンスへの欲求を抑えつつも、音楽が流れ出せば勝手に動き出す身体を持て余していた。
そしていつしか、公演が終わって無人になったステージに立ち、翔から持たされたスマホから流れる音楽をヘッドホンで聴きながら、思うままに身体を動かすようになっていた。
とてもダンスと呼べるような、そんなレベルではなかったけど、リズムに身を委ね、汗を流すのは、最高に気分が良かった。
もっと踊りたい…
あの頃のように、ただただ踊ることが楽しくて仕方なかったあの頃のように、もっと自由に…、全身で音楽を表現したい。
日増しに高まって行くダンスへの欲求が、俺を“死にたくない”って…
“まだ生きていたい”
“まだ踊っていたい”
そう思わせるようになっていた。
そして俺は、二十歳の誕生日を迎える頃、支配人室のドアを叩いた。
「俺のダンス…見てくれねぇか…」って…
翔はその一言で全てを察したのか、作業の手を止め、無人のホールに俺を連れて行くと、ステージの中央に俺を立たせた。
そして呼び寄せた副支配人の雅紀と並んで客席に座ると、足を組み、腕を組んだ。