第13章 Life…
俺が翔の言った言葉を漸く理解したのは、煙草の匂いが染みついた支配人室に入ってからのことだった。
革張りのソファーに深く身体を沈め、咥えた煙草に火をつけた翔は、俺を隣に座らせると肩を抱き寄せ、顎先に手をかけた。
「なぁ、さっきの話なんだけど…」
今にもお互いの唇が触れ合う間際で、翔の動きがピタリと止まる。
「さっきの話って…。ああ、お前にステージに立つ気はねぇか、ってやつか?」
「そう、そのことなんだけど…、俺、今一意味分かんねぇんだけど…」
そもそも俺の知ってるストリップって、女がするモンであって、男のストリップなんて聞いたこともなければ、見たこともない。
尤も、女だろうが何だろうが、俺自身ストリップ自体見た事ねぇけど…
「俺、男だよな?」
「ああ、知ってるが?」
「男のストリップなんて、誰が見に来んだよ」
女の裸目当ての男共が対象だ、ってことくらい、ガキの俺だって知ってることだ。
「くく、それなら答えは簡単だ。ここに来る客の殆どは男だ。それも若くて小綺麗な男の裸目当てのな」
そっか…、そういうことか…
「で、でも、なんで俺が…?」
俺なんかより、見てくれの良い男は、その辺にゴロゴロしてるのに、どうして俺を…?
それも翔の恋人でもある俺を…
「”なんで”、か…。本音を言えば、お前を誰の目にも触れさせたくはねぇ。でもな…」
俺の肩を抱いた翔の手に力が入り、タバコを揉み消し、空いた手で俺の頬を撫でた。
「お前が踊りたそうにしてたから…、って言ったら理由にはならねぇか?」
「俺が…踊りたそうにしてた…?」
確かにそれは自分でも薄々感じていた。
潤を亡くし、あれ程までに憎み、拒絶していた筈のダンスを、俺はまた踊りたいと…そう思い始めていた。
でもそんなの…許される筈がない。
例え潤が許してくれたとしても、俺自身がダンスを続けることをきっと許さない。
潤から全てを奪ったのに…