第12章 Goodbye, and ...
「打ちどころがね…、悪かったそうよ…」
次に俺が目を覚ました時、母ちゃんは静かに声を震わせた。
俺はその言葉が何を意味する言葉なのか、全く分からず…、ズキンと痛んだ頭を片手で抑えた。
頭…痛ぇ…
それに身体も、まるで自分の物じゃないみたいに重くて、指の先を動かすのですらも億劫に感じる。
でも母ちゃんは洗濯物を畳む手を止めることなく、
「信号無視…だったって…。酷い雨のせいで視界も悪かったのね…、急ブレーキを踏んだけど間に合わなかったって…。それで気付いた時にはアンタも…、それから一緒にいた子も地面に叩き付けられた後だったって…」
ポツリポツリと呟く声が、どんどん掠れて行って、洗濯物を畳んでいた手は、とうとうピタリと止まった。
そっか、あのトラック信号無視だったんだ…
でもさ、母ちゃん…
俺が聞きたいのはそんなことじゃないんだよ…
だってそこまでなら、俺だって朧気ではあるけど覚えてる。
急に黒くて大きな物体が近付いてきたかと思ったら、次の瞬間には物凄い衝撃と共にアスファルトに叩き付けられて、それから…
そうだ…
仰向けで地面に寝転がった潤の周りが、どこから溢れたか分からない血で真っ赤に染まって、それから…
それからどうしたっけ…
そうだ、名前…呼んだんだ。
潤…、て…
声にはならなかったけど、心の中で何度も何度も…
そしたらさ、アイツ笑ったんだ…それまで一度だって見たことのない超綺麗な顔で笑って、俺に向かって何かを言ったんだ。
でもその声は雨音に掻き消されて、聞こえなかった。
ああ、あの時潤は何て言ってたんだろう…
聞かなきゃ…
「母…ちゃ…、潤の部屋…連れてってよ」
俺…、アイツに聞かなきゃなんねぇことあんだよ。
どうしても確かめたいことがあんだよ。
だから…、頼むから、潤に会わせてくれよ…