第11章 First contact…
立ち話もなんだから、と招かれて始めて入った潤の家は、外観と同じく洒落た家具と、いかにも高そうな家電で飾られていて…どことなく無機質な空気が漂う空間に、生活感はあまり感じられない。
「適当に座っといて。今飲み物用意するから…」
通されたリビングで、所在なさげにする俺に、潤が黒い革張りのソファーを指さす。
「ああ、うん…。でも出かけるんじゃなかったのか? だったら俺…」
内心、この重苦しささえ感じる状況から、逃げ出したかった。
「別に大した用でもないから…」
「そっ…か、ならいいんだけど…」
やっぱりどれだけ会話を重ねても、ぎこちさが拭えない。
前って、こんなだったっけ…
少なくとも、潤と一緒にいて、こんなにも居心地が悪いのは、初めてかもしれない。
「コーラでいいよね?」
「あ、うん…」
「今さ、うちの親出張でいなくて…、このままで悪ぃな…」
ガラスのテーブルに、コーラのペットボトルを二本置きながら、潤が気まずそうに頭を掻いてから、ペットボトルを一本掴んでキャップを捻った。
プシュッと音を立てて、コーラ独特の匂いがツンと鼻をつく。
「そういえば、さ…、風邪…大丈夫なのかよ?」
見た感じ、体調が悪そうな雰囲気は全く感じられない。
少し痩せたかなって気はするけど、顔色だってそう悪くはない。
「風邪、って? え、誰が?」
一瞬口に含んだコーラをゴクリと喉を鳴らして飲み込み、潤が目を白黒させた。
「もしかして、”俺”が? 俺ならこの通り、元気だけど?」
プッと吹き出して肩を揺らした。
「だ、だって学校にもずっと来ないし…、だから…俺てっきり風邪でも引いたのかと…」
「心配…してくれたんだ?」
「あ、当たり前だろ…、その…、“友達”なんだから…」
「くくく、そっか、そうだよな、俺ら“友達”だもんな? 心配してくれてありがとな?」
「う、うん…」
なんだ…、俺の早とちりだったのか…
でもそれはそれで余計に気まずいんだけどな…