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踊り子【気象系BL】

第10章 Rainy kiss…


流れてきたのは、あの曲に合わせて踊る松本の姿で…

「これ…、お前?」

「うん、まあ…」

小柄な俺とは違う、長身と長い手足を活かしダイナミックで、尚且つセクシーなダンスに、俺の視線が釘付けになる。

やべぇ…、かっこいいじゃん…

決して上手いとは言えないけど、松本のダンスには、何か惹きつけられる物を感じる。

「あ、ここ!」

食い入るように見ていた俺は、松本潤が突然上げた大きな声に身体をビクッと震わせた。

「ここのステップがさ、イマイチ決まんなくてさ…。何かいいアイデアない?」

「は、はあ? 何で俺に聞くんだよ…」

「いや~、大野君だったらどうするかなぁ、って思ってさ」

満面の笑みを向けてくる松本に、面倒臭さを感じてしまう。

はぁ…、やっぱ来んじゃなかった…

なんてことを思いつつも、やっぱり頭の中で作り上げた振りを試してみたくて…

「いいか、一回しかやんねぇからな?」

ベンチから腰を上げると、用意してあったプレイヤーの再生ボタンを押した。

何度も…それこそ耳にタコが出来るくらいに、何度も繰り返し聴き込んだ曲がプレイヤーから流れ出す。

瞬間、俺の頭の奥でカチリと音を立ててスイッチが入った。

俺は流れる曲に合わせ、頭の中で思い描いた通りに身体を動かし、ステップを踏んだ。

無心で踊った。

松本がその濃い顔をキラキラ輝かせ、スマホを片手に俺を見ていることさえ気にならないくらいに、ただただ音楽に身を委ねることだけを考えていた。

想像でしかなかった振りが、俺の身体を通して形になって行く。

それが嬉しくて、楽しくて…

最高に幸せな時間だった。

やがて曲が終わり、最後のポーズを決めた俺は、フッと息を吐き出すと、着ていたダウンの前を開けた。

五分にも満たない、僅かな時間…

そんな短い時間でも、Tシャツは汗でしっとりと濡れていた。
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