第10章 Rainy kiss…
嫌々高校に入学した俺は、元々の人見知りの性格のせいもあって、誰ともつるむことなく、いつも教室の片隅で、両腕を枕に机に突っ伏していた。
そもそも高校に進学するつもりなんかなかったから、人と関わりを持つのも、学校に通うのも、正直なところ面倒でしかなかった。
親にどうしても高校だけは出てくれ…、と泣きつかれて仕方なく決めた進学に、何の希望も見出すことなんて出来なかった。
将来のことなんてどうだって良い、こんな無意味な毎日に時間を費やすくらいなら、適当にバイトでもして、自分の好きなことだけをして過ごした方が、よっぽど気楽で良い、ってな…。
そんな俺に最初に声をかけて来たのが、クラスでも特に目立つ存在だった松本潤だった。
最初は相手にするつもりなんてなかった。
だって友達ごっこなんて、ガキの自分が言うのもなんだけど、ガキっぽいし… 、正直面倒臭いだけだから…
でも松本潤はズカズカと俺のテリトリーに入って来やがった。
なんの遠慮も無しに…
「君さ、この動画の人だよね?」
肩を叩かれ、仕方なく顔を上げた俺の前に、一台のスマホが差し出された。
その液晶には、R&Bのリズムに合わせて踊る男の姿が映し出されていて…それは紛れもない自分の姿で…
でも俺はその映像をチラッと見ただけで、
「知らねぇ…。俺じゃない」
それだけを返すと、再び机に突っ伏した。
なのに松本潤は引き下がることなく、俺の前の席の椅子にドカッと座ると、捲し立てるように一人喋り出した。
「そっか…、最初に君を見た時、顔とか雰囲気とかさ…超似てると思ったんだけ…。マジで君じゃないの? ほら、もう一回よく見てよ」
うるせぇ…
俺はイヤホンを耳に突っ込むと、音楽プレイヤーのボリュームを上げた。
そこに映っているのが、例え俺であろうがなかろうが、俺の答えは同じ。
「俺じゃない」