第8章 理解が困難なアイツと私
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……と、まぁ。
決意通り、には、なったけども。
うっすらと朝の光が差し込む部屋で、窓の外からはスズメの可愛らしい声が聞こえる。
カーテンを開けたくて起き上がろうとはしてみるものの、それは叶わなくて。
喉が渇いたからお水が飲みたいのだけれど、それも出来なくて。
何故かと言うと、身体の自由が効かない程に“また”拘束されているから。
……どうしてコイツは、ここにいるんでしょうか……?
猛スピードで変わりゆく日常の中で、随分と、こんな状況にも慣れてしまってる事は、一旦置いといて、だ。
働かない頭で、ゆっくりと整理していく。
今、私をガッチリと拘束しているのは、言わずもがな。
昨夜、私の部屋に来訪なさった、暴君である。
拘束、と言った、色気のカケラもない言い方をしてしまったけれど、言い換えれば、“抱き締められている”になるのであろう、なんとも摩訶不思議な状況だ。
でも、私達の間に、そういう表現は、似合わない気がする。
だって、相手がジャンだから。
弱味を握っている側と、握られている側。
言うなれば、奴隷と君主みたいな関係で。
“抱き締める”なんて、恋愛っぽい言葉を使うには、あまりにも遠過ぎる。
それにしても……
コイツ、毎回こんな感じだなぁ。
ジャンは、毎度の事思いっきり私を包み込むかのように拘束して、眠る。
まるで抱き枕扱い。
ぎゅう。と強く、でも苦しくはない程度に優しく。
隙間なくジャンに包み込まれているこの状態は、不思議と悪くはなかった。
……捻くれた言い方になってしまうのは、相手がジャンだからだ。
お互いの鼓動や熱が、触れ合う距離。
あったかくて、何だか、守られているような気さえ、した。
まぁ、今日は服を着ているから、こんな悠長なことが言えるのかも知れない。
現に、初めて体感した時は、混乱しすぎておかしくなりそうだったわけで。
冷静でいられるってスバラシイ。