第6章 別人なアイツに捕らわれた私
余裕溢れるジャンの顔が、また少し、近付く。
覗き込むような仕草に、また私の顔が歪む。
「一回したんだから、もう、何回しても、同じだろ?」
「あ、れはっ……!」
「お前が言ったんだよ、最高。って。」
「違う!全部、ま、違いよ!もう忘れるから、ジャンも忘れて!!」
叫ぶように言った私の言葉に、目の前のジャンはニヤリと笑う。
その笑顔が……
狙いを定めた捕食者の顔に見えて、私は引き攣った。
「やだね。こんだけ相性いいんだぜ?誰が手放すかよ。」
言うが早いか、あっという間に押し倒されて。
私はベッドに組み敷かれた。
「なっ、ちょっ、ジャン!?」
「あ?」
「じょ、冗談……辞めてよ!」
必死に抵抗するにも、力の差は歴然で。
振り解く事すらも出来ない腕の強さに、不安だけが募っていく。
そんな私を嘲笑うかのように、口の端を上げたジャンの顔が、近付いてきて。
咄嗟に、逸らした私の首筋に、ジャンは唇を落とした。
「バカだな……お前。」
「ひっ……ッ!」
耳元で呟きながら、ペロリ。
首筋を舐め上げられる。
甘暖かさと、ざらりとした舌の感覚に、背筋がゾクゾクとした。
「もう、ガキじゃねぇんだから。冗談じゃねぇ事くらい、分かるだろ?」
「や……だッ……、ジャン……。」
抵抗しようと腕を押し付ける指先が、僅かに震えた。
それに気付いたジャンが、それを搦め捕り、キュッと握った。
その熱に、
その体温に、抗えない何かを感じて、不安が押し寄せてくる。
「……美咲。」
優しく。
甘く。
囁かれた名前に、ソッと顔を上げで、ジャンの方を伺った。
「お前から……俺を求めるようにしてやるよ。」
その言葉を合図に、微笑む悪魔が私の身体に堕ちてきた。