第3章 酔いが覚めたら誰のせい?
[ジャンside]
美咲の腹部に吐き出した自身の欲を、無造作に置いてあった塵紙で拭き、俺は一つ、息を吐いた。
月明かりに照らされた美咲の顔は、何故かすげぇ神秘的に見えて、心の内の罪悪感がジワジワと広がっていく様な錯覚さえ起こさせる。
少しばかり、冷静になった頭で、思考する。
どうしたら、コイツをこのまま、俺に縛り付ける事が出来るのか。
無防備に瞳を閉じている美咲を、ソッと抱き抱え、出来る限り優しく、ベッドに下ろした。
部屋の隅に畳んである毛布を取り、美咲を起こさないよう、隣に寝転ぶ。
隣で、静かに眠りについている美咲。
その白くて細い肩にソッと触れ、再び思考を巡らせる。
さっきまで熱に浮かされていた顔はどこに行っちまったんだか……
そんくらいの、安らかな寝顔。
…………起きたら、
なーんも、覚えちゃいねぇんだろうな。
そう思うと、胸の奥がジクジクと痛んだ。
仕方がねぇ事だ。
正常な判断が出来ねぇような状態の美咲に漬け込んだのは、俺。
俺の独りよがりな欲求を優先して、突っ走ったこの夜の出来事が、多分……
いや、きっとコイツを苦しめると分かっているから。
「……美咲」
ごめん、な。
と、頭を撫でる。
眠っている相手に謝ったって仕方がねぇけど。
だからと言って、正気を取り戻した美咲にこんな事……
絶対に言わねぇ。
言えねぇ……
悪い事をした自覚はあるが、後悔はしてねぇから。
今日を逃したら、美咲に触れられないような気がしていたから。
なんて事を考える俺は、どこまでも自己中心的な人間だっつー話しなんだが。
こんな気持ちになるのが生まれて初めてだから、自分でも上手く消化が出来ずにいる。
……自分がこんなにも、執着するタイプだとは、思っていなかった。