第20章 ※アイツと私の特別な休日
[美咲side]
「……昨日は……、悪かった。情けねぇ姿見せちまって……。」
「いえ、そんな事ありません!」
「詫びと言ってはなんだが、また……食事にでも行かないか?」
翌日、トロスト区の壁の上に姿を現したリヴァイ兵長が、私に気を遣ってか、一人でいる時に声を掛けて来た。
それを見て、思わずクスリと笑ってしまう。
目の前にいるのは、紛れも無い"人類最強の男"と呼ばれるリヴァイ兵長に戻っている。
……気にし過ぎです。リヴァイ兵長。
もちろん、「嫌だ」なんて欠片も思っていない私は、すぐに返事をした。
「体調、大丈夫でした?……結構飲まれてたので。私の事なら全然気にしなくて大丈夫なので、また誘って下さい。」
「面白いものが見れて得をしました」、と言うのはやめた。
きっと彼だって気にしているから、こうやって声を掛けてきたんだろうし。
リヴァイ兵長の背中が遠くなって、ハンジさんの解散の声が聞こえる。
「さて、と」
呟いて、一つ伸びをする。
早朝に関わらず、民衆への壁のお披露目も終わった事だし、トリガーを引き、宿舎へ帰ろうとした私の肩を大きな手が掴んだ。
「美咲、ちょっと頼まれてくれないか?」
声を掛けて来たのはモブリットさんで、何やら慌てている様子が垣間見れる。
私は一旦トリガーを離し、モブリットさんに向き合った。
「どうかされたんですか?」
「それが……ハンジ分隊長の事なんだが、ウォール・マリア奪還作戦まで、会議やら作戦やら進路やらで俺も少しばかり忙しくてね。」
「またお手伝いですか?」
「いや、ハンジ分隊長と俺達の分の食料と飲み物を街に買い出しに行ってくれないか?……頼めるのが美咲しかいなくて、すまないが。」
眉を下げて手を合わせる困り顔のモブリットさんに、誰が嫌と言えるだろう。
街に一人で出掛けるのは好きではないが、私は快く了承した。