第17章 ※アイツの約束あの人の秘密
「兵長お疲れ様です!飲み物は紅茶で大丈夫ですか?あ、あと、美咲ちゃんもまたさっきの紅茶でいいかな?」
少しだけギクシャクした空気を割ったのはマレーネ班長の声。
リヴァイ兵長はその声に眉をピクリと動かして、静かに溜息を吐いた。
「……いや、一杯目だけワインを頼む。」
私も引き攣った顔でマレーネ班長に頭を下げて、彼にオーダーを任せる。
何故か気になってしまうのは、リヴァイ兵長の険しい顔で。
私やっぱりいらなかったんじゃないかな……
一介の兵士が立ち入る場所じゃない……
そう思い、何とか落ち着こうと、もう空になってしまっているティーカップに口を付ける。
容器に紅茶は入っていないが、フワリと香る茶葉のにおいに少しだけ冷静になれそうな気がした、けど。
不機嫌に見えるリヴァイ兵長と目が合ってしまうのが怖くて、彼の方を見れなかった。
隣のハンジさんは、と言うと。
何やら、さっきからニヤニヤとリヴァイ兵長を見て、笑いを堪えている様子だ。
彼女が何の笑いを堪えているのかは、私には分からないけど。
今はこの胃が痛むような時間をやり過ごすのにいっぱいいっぱいな私は、目の前に置かれたサラダを小皿に取り分けて、リヴァイ兵長に渡した。
「あ、の……お疲れ様です。」
そう微笑むと、リヴァイ兵長は一瞬目を見開いて。
そしてすぐに、いつものあの柔らかい顔に戻って、小皿を受け取った。
その表情一つだけで、胸がきゅう。と鳴って。
強張っていた身体の力が抜けていく、ような感覚がした。
運ばれて来た飲み物がリヴァイ兵長と私に回り、本日2度目のディルク班長の乾杯で、前祝いの会が再び賑わいだす。
「美咲。彼は気付いていないようだけど、リヴァイがお酒を頼む時は、緊張していますって時だからね。」
耳元で軽く笑いながら囁いて来たハンジさんの言葉に驚いて、私はリヴァイ兵長に視線を向ける。
彼は私の方ではなく、モブリットさんが手にしていた新兵器試作品をマジマジと見ていて、視線が合う事はなかったけど。
……一つだけ、リヴァイ兵長の秘密を知ってしまった気がした。