第1章 ※それは月夜の酔いのせい?
[ジャンside]
最初は、全く意識していなかった。
飛び抜けて美人ってわけでもなく、振り返るほどスタイルがいいわけでもない。
そもそも、そんな女は同じ104期生に、ミカサと言う、美に愛された兵士がいるわけで。
美咲は、普通の、まぁどっちかっつーと綺麗な方に入るんじゃねぇの?ってくらいの、同期。
アルミンのように、舌を巻くほど賢いってわけでもなく、アニのように格闘に秀でているわけでもない。
発想がユニークだとか、天才肌だとか、程遠い女。
ただ、ミスは少なく、時折、気の利いた先回りをする女だな。とは思っていた。
美咲と一緒に訓練をしていて気付いたのは、やりやすい、ってとこ。
兵団と一口に言っても、クセ者だっているし、自己主張が強い輩が多い訳で、兵士同士でぶつかり合う事も多い。
俺もその内の一人である訳だが。
だが、美咲と組むと、不毛な争いが起こりにくかった。
遠慮して口出ししねぇとかそんな甘ったれた事じゃねぇし、言いてぇ事は言って、納得してねぇところは納得するまで話し合う。
その変わり、上官の命令以外の妥協はしねぇ。
女にしては珍しい、そのスタンスが心地良かったのかも知れない。