第17章 ※アイツの約束あの人の秘密
[美咲side]
雨が屋根を打つ音。
瞼越しに感じる、淡い光り。
カタン。
小さな音が室内で聞こえ、気怠い身体に少しだけ、力を入れてモゾモゾと動かす。
「……ん。」
「なんだよ、起きたのか。」
「…………。」
私のものではない声。
このタイミングで、この部屋にいるやつなんて、一人しかいない。
ゆっくり起き上がり、重い瞼を擦りながら目を開くと、ジャンがズボン一枚で、机の前に立っていた。
「ちょっ……何その格好?!」
「何が?」
「服っ!着なさいよバカ!」
「はぁ?今更だろ。……つーか、それを言うならお前もだ。」
「へ?」
呆れ顔のジャンの言葉に、自分が来ている服を即座に確認。
そう言えば、ロンTだけで寝たんだった。
少し長めとはいえ、お尻が隠れるくらいの丈。
自分じゃ着る体力がなくて、昨夜確か、ジャンが着せてくれたような……気がする。
ジャンの視線に耐えきれず、ギリギリまで袖を引っ張って、何とか足を隠そうと試みる。
「ぶはっ!隠れてねぇよ!」
「う、うるさい!」
ケラケラ笑うジャンを横目に、床に落ちているであろうズボンを、慌てて探す。
……早く履かねば。
部屋着の薄い生地のズボンをひっ掴み、即座に足を通した。
ジャンが、思いっきり吹き出した顔を思い出して、自然と顔が引き攣る。
何だかジャンには、間抜けなところばかり見られているような気がする。
ジャンに視線を戻すと、何故か机の上には、二人分のスープが乗った器。
まるで自分の部屋かのように、椅子に偉そうに座っているコイツは……
「……って言うか、なんでいるの?」
思わず口に出てしまった言葉に、ジャンが振り返る。
「あ?」
「部屋に戻って準備しなくていいの?」
まだ外は薄暗いけど、いつもならとっくに帰っている時間だ。
今日も調査兵団の仕事はあるし、時計にチラリと目を向けると、あまり余裕はないように思える。
普段通りなら、焦ってもいい時間のはず。
なのに、準備を急ごうともしていないジャンに、違和感を抱いた。