第2章 同期のアイツと憧れのヒト
[美咲side]
少しだけ小柄だけど、驚く程に綺麗な顔立ち。
切れ長の瞳は、鋭く光っていて。
人類最強と呼ばれるその背中に、どうしようもなく憧れてしまった。
「……見惚れすぎだ、バカ。」
「?!」
私にしか聞こえないであろう小声で、心を見透かしたような、指摘をされた。
調査兵団の兵舎で、ハンジ分隊長と話す憧れのヒトを見ていた私。
バカとは何だ。
何て思うけど、図星過ぎて何も言えず、声を掛けてきたジャンを睨んだ。
そんな視線をものともせず、愉快そうに口角を上げるジャンに、顔を歪めていると。
「美咲ー!!」
「ッ、ふ、はい!!!」
突然、こちらに気付いたハンジ分隊長が手を振って、どもってしまった。
隣からは、「ブッ」と、小さく吹き出す声。
「昨日の資料の纏め方、凄く良かったよ!また何かあったらお願いしたいんだけど、いいかなぁー?」
「は、い!大丈夫です!」
返事をすると、ハンジ分隊長の隣にいたリヴァイ兵士長が、訝しげな表情でハンジ分隊長を見ていた。
「何でアイツにやらせてんだ、テメーは。」
アイツ……
リヴァイ兵長の口から出た、私の存在を感じさせる言葉に、喜びと、少しばかりの居心地の悪さを感じる。
顔に熱が集まるのを感じると同時に、緊張で口が開けずにいると、ハンジ分隊長が「あぁ。」と、笑って言った。
「いやぁ、それがね。昨日、資料を届けて貰うだけだったんだけど、私もモブリットも忙しくてさぁ。少しだけ手伝ってもらったんだよ。」
言われた事は間違いのない事実だけど、一兵士の私が、手伝っても大丈夫だったのか、リヴァイ兵長の様子を見て、少しだけ不安になって。
……凄く間の悪いタイミング。
何て思ってはみたけど、それももう遅い。