第11章 距離が縮まるアイツとあの人
兵器の改良にはきっと時間が掛かる。
今回の任務には、多分そこに私も加わっているだろうし、これからはスケジュールが大変だ。
普通なら、一介の兵士である私が立ち入るのはおかしな状況ではあるが、任されたものはどうしようもない。
体力的にも精神的にも、削られそうな気がする。
……忙しくなりそうだな。
なんて考えていた私の後ろ。
団長室の扉が開いたと思ったら。
「おい。」
急ぎ足でハンジさんの書斎に戻ろうとしていた私を呼び止める声。
声の主は、リヴァイ兵長で。
いつの間にか距離を詰めていたリヴァイ兵長が、私の目の前に立った。
「……どうかされましたか?」
「その……、すまない。」
……どうして謝るんだろう。
用事はなんなんだろう。
頭に「?」を貼り付けているだろう私に、リヴァイ兵長はバツの悪そうな顔をした。
「……少し、話しをしたかっただけだ。」
「話し……ですか?」
「あぁ。」
そう言ったリヴァイ兵長の顔は、さっきまでと、少しだけ雰囲気が違っていて。
前に御飯を一緒に食べに行った時に近い、僅かにくだけた空気。
「……忙しくなりそうだな。」
「えぇ。でも、頑張ります。」
「間に合いそうか?」
「期日までにはなんとかさせます!」
資料の心配、かな。
それとも、兵器の方かな。
とにかくリヴァイ兵長の質問から、その二つだと結論付けた私は安心して欲しくて、力強く答えた。
リヴァイ兵長は少しだけ眉を寄せ、思案したあと「そうか。」ともう一度呟く。
私はまたしっかりと頷き返した。
少しでも力になれて嬉しかったから。
ガッカリさせないように、ちゃんとしなきゃ。
心の中で決意し、にっこり笑った。
リヴァイ兵長も、フと顔を緩めてくれた。
……けど。
その日を境に、頻繁に書斎に来て食事の誘いをしてくれたリヴァイ兵長の姿は、パタリと見なくなった。