第11章 距離が縮まるアイツとあの人
あの日以来、リヴァイ兵長は時々ハンジさんの書斎を訪ねては、私を食事に誘ってくれる。
……けど、中々タイミングが合わず、一度も実現出来ていない。
距離は縮まったようでも、まだまだ遠い。
そんな風に、思う。
ジャンは相変わらず、頻繁に声を掛けてくる。
暇な時は承諾する……
と言うか、承諾せざるを得ないし、そうでない時はもちろん断る。
私の仕事が忙しいか、忙しくないのか、ジャンには筒抜けみたいなもんだから、仕方がないと言えばそうなのかも知れない。
私は、と言うと。
何だか不思議な状態だな。なんて、他人事みたいに思っている。
リヴァイ兵長からの誘いは、それこそ飛び上がる程嬉しいし、是非また一緒に御飯に行きたい。
顔を見ればドキドキして、あの日を思い返すと胸がきゅう、っと鳴る。
憧れているヒトとの思い出に、恋する乙女思考になってしまうのも、無理はない気がする。
けれど、それを理由にジャンを突き放せれるほど、確定的だとも言い難かった。
つまり、リヴァイ兵長が好き、だと、ハッキリと言える程に強い感情は、まだないように思う。
何より、ジャンにそれを伝えた時のリアクションが、怖い。
「良かったな。」なんて言って、優しい同期としての一面を発揮し、応援してくれるのか。
それとも、最大の弱味を握った、とばかりに、悪魔の笑みを浮かべるのか。
……どう考えても、後者になりそうな気がしてならない。
かと言って、この状況を打開するいい案が浮かぶ訳でもなく。
考えたら考えた分だけ、顔が強張っていくだけだったから、私は“深くは考えない”という方法を選んだ。