第10章 揺れた瞳はダレのせい?
[ジャンside]
事は、思惑通りに進んでいた。
昼間の、任務外の空いた時間に自然と話すようになった。
そして、美咲の部屋へ行く事も増えた。
最初こそ無理矢理上がり込んでいたが、その内慣れたんだろう。
美咲は、俺が手ブラで来ても、自ら食事の用意をしてくれるようになった。
時には、俺が街へ出て、配給以外の食い物を買って行く事もあった。
興味深そうに店の名前を尋ねて、美味しそうに飯を食う美咲を見ているのは、かなり気分が良かった。
そして、彼女は抵抗する事を、諦めたようにも見えた。
何を言ったって、俺が引かない事が分かったんだろう。
抵抗しても無駄だと、どこかで気付いたのかも知れない。
そうやって、じわじわと、美咲と過ごす夜に、変化を刷り込んだ。
二人で同じモン食って、くだらねぇ事でバカ言って、楽しく会話して。
そして、触れる。
触れるっつっても、毎回全てを求める事じゃない。
ただ抱き締めて眠るだけの日もある。
さすがに「いつでもどんな時でも抱かせろ」なんて事は言わねぇよ。
抱き締めて眠るだけでも、心が満たされるっつー事は、十分分かってるし、な。
それに……
毎回触れていたら、“身体目当て”だと思われそうで怖かった、つーのも、ある。
いや、身体で縛ろうと決めた俺が、何言ってんだ。
と思うだろうが、そんな矛盾が勝手に自分の中に生まれてくるもんだから、こればかりはどうしようもねぇ。
そして、最終的に、それを実行する権利は、完全に俺が握っていた。
夜を一緒に過ごす事が普通になって。
お互いに触れる事が、普通の事になってしまえば。
俺が隣にいる事が、美咲にとっての“当たり前”になると、信じていた。