第6章 〜舞い落ちる翼〜
何が起こったか分からなかった。
ドアが開いたと思ったら、知らない男たちが急に入ってきて、乱暴に私を捕まえて、気づけば鎖に繋がれている。
また…あの時と同じ……。
ごめんなさい………死神さん………。
ドゴォーーン…………。視界が砂煙に包まれる。
何…?何が起こったの?
未だ晴れない砂煙の中から誰かがこちらに向かって歩いてくる。
『誰…?』
『まぁ…。よかった………』
その声は今だかつて聞いた事のない、震えた声であった。まぁを優しく抱きしめる。
『さあ、帰ろう。今日は私が食事を作るよ!』
あぁ…幸せだ。
ピシュン…………。
死神の左胸が赤く染まる。
えっ…………。ドサッ…。
最後の力を振り絞った男が死神目掛けてピストルを撃ち、息絶えた。
『そんな………。いや!死神さん…!しっかりして…!』
死神『まぁ……。今朝…言い忘れていた事があります…。私は、一度だけ、人を愛しました……。』
『喋らないで!すぐに治すから!』
死神『いけません…。君の力は………グフッ!ゴボッ!』
死神の口から真っ赤な血が吹き出る。
遠のく意識の中、ゆっくり唇が触れ、舌を絡めると、何度も何度も執拗にキスは続く。
つぎに彼女の温かな体温が身体に触れているのを感じる。
死神『うっ……。傷が塞がって…。まぁ?!』
隣を見ると、彼女は優しく微笑みかけながらこちらを見ている。
死神『まぁ……。そのカラダ…。』
彼女のカラダは今にも透けて消えてしまいそうだ。
死神『なぜ、力を使った!分かっていたはずだ!自分の命と引き換えだったことくらい…』
『愛してたから………。あなたを。
だから、生きていて欲しかった。
嬉しかった。あなたと過ごせた日々が…。幸せだった…。
本当はもっと一緒にいたかった…。』