第6章 天才と数学のテストではない
桃浜の時計を思い出していると、テスト用紙が配られてきた。
やっぱり今日も、簡単な問題。これならすぐ解ける。
急いで自分の腕時計に目をやる。開始時間を確認しておかないと、桃浜に「何秒で解いた?」と聞かれても答えられない…。
そこまで考えて、今日は桃浜がいないことを思い出した。
オレはシャーペンでコツコツと机を叩いた。
時間が無駄に流れていく。
なんだか問題を解く気がしなかった。
このテストは教師が黒板に答えを書いて、自己採点をするだけで終わる。問題を解かなくたってバレやしない。
だからって今まで解答をサボったことなんかなかったが、今日のオレはシャーペンから手を離した。
桃浜がいないのに、こんな問題マジメに解く意味があるだろうか。