第4章 天才と休み時間
「すごーい、頭脳線ながーい!」
休み時間。教室のオレの右隣で、桃浜が何人かの友だちと手のひらを見せあっていた。
どうも雑誌を見ながら手相占いをしているらしい。
オレは赤坂と2人で特に内容のない雑談をしていたのだが、桃浜が
「ねえ伊豆くん、手見せてよ」
と割り込んできた。
おいまさか、手相まで張り合うんじゃないだろうな。
しょうもなさすぎる、と思ったが、強固に断るほどでもないのでオレは素直に手を出した。
桃浜がしげしげとオレの手を眺める。
赤坂も他の女子に手を見てもらっているようで、オレの脇で大いにニヤけていた。
「桃浜でも、こういうの気にするのか」
オレはポツリと呟いた。
「え?なに?」
「何か桃浜って、手相とか占いとか、気にしない方かと思ってたよ。現実的というか、地に足がついているというか」
「んー、そうだね。朝のニュースの占いくらいは見るよ。3チャンネルのやつ。でも確かに占いとか、そんなに興味ないかな」
おい、じゃあなんでわざわざオレの手なんか見てるんだよ。
オレがそう聞くと、
「私、伊豆くんに勝てるものがないかどうか、必死なの」
フフッと笑いながらそう言った。
手相の勝ち負けってなんなんだ。